メルヘン社の美術書
ベストセラー選書
エゴン・シーレ
アレッサンドラ・コミーニ著 千足伸行訳 \4,800
本書は、「グスタフ・クリムト」(千足伸行訳、メルヘン社)と双書を成している。著者にはすでにこの画家に関する本格的な研究書「エゴン・シーレの肖像」(Egon
Schiele's Portrait, 1974)があり、これはエゴン・シーレ研究の基本文献の一つとなっている。
本書は、そのモノグラフの直後の出版だけに、前説の論文の短いながら非常に凝縮された濃厚な内容となっていて読みごたえがある。
著者のコミニーはここで、鬼才というべき天分に恵まれながら、その反面社会性を著しく欠いた分裂症気質のこの世紀末画家の肖像を、得意の存在論的な視点から見事に浮き彫りにし、それによって、彼の芸術がその官能的なグラフィズムの裏に隠している人間的な襖脳や惑弱に、私たちの探求の目を導いてくれる。
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また本書では、エゴン・シーレの代表的な作品からなるカラー図版の他に、シーレ写真アルバムとして、家族や友人とともに撮った幼少期からの写真50枚を収録し、シーレの素顔を魅力的に綴っている。
本書は、世紀末の画家を代表するシーレのモノグラフをコンパクトに凝縮して、シーレの芸術の全体像を浮き彫りにしている。
翻訳者について
千足伸行(せんぞく のぶゆき)
東京大学文学部美術史学科卒業
成城大学文芸学部教授